作品集 Gallery
作品と語り合うために
タイトルの俳句について
何事の見立てにも似ず三日の月(なにごとのみたてにもにずみつかのつき)
「三日月は古来さまざまな物に譬えられるが、どんな譬えもあの美しさには匹敵しない。」
三日月は古来色々なものに譬えられてきた。鎌であるとか、櫛であるとか、三日月眉であるとか、細目の表現など。しかし、いましみじみと三日月を見ていると、そのどれにも似ていないし、その美しさはたとえようがないではないか。見慣れた対象にたいして、新しい発見の瞬間を表現しているようである。
引用:新潮日本古典集成「芭蕉句集」
月は美しいのでしょうか。身の回りにあるものすべては、美しくないのでしょうか。これら存在物は、みな美しいともいえるし、みな美しくないともいえる。それはそれらを見る人によって違って見えます。しかもそれらの美しさを見事に表現できるかは別問題です。これらの美を表現できたとして、その表現されたものを鑑賞者が美しいと感じられるかは、また別問題で、それはまた鑑賞者の審美眼にゆだねられます。ものを創るというのは、作り手、使い手の呼吸があって初めて価値があるのだと思いますね。
「見立て」は比喩の意。月の見立ては「月の剣」「月の眉」「利鎌」「峨眉」等々、和漢ともに例が多くあります。