「斑唐津」の白い釉薬の成分は何か?

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古唐津の「斑唐津(まだらからつ)」に用いられる白い釉薬は、主に藁灰釉(わらばいゆう)を主成分として調合された、乳濁性失透釉(にゅうだくせいしっとうゆう)です。

この釉薬は、その調合成分と特性において、当時の日本の陶器に「白」を装飾として導入した画期的な技法であり、白唐津とも呼ばれています。

斑唐津の釉薬の主成分

斑唐津の釉薬(斑釉または藁白釉とも呼ばれる)は、主に以下の三種類の原料を組み合わせて調合されています。

  1. 藁灰(わらばい/ワラバイ)
    • この釉薬の主原料であり、イネ科の植物(米、麦など)の灰、または稲穂を取った藁籾(もみ)、茅(かや)、笹などの珪酸質の灰が用いられます。
    • 藁灰は珪酸分を普通の灰の二倍前後も多く含んでおり、そのため釉薬は高珪酸質となり、白濁色に変化します。これは珪酸質乳濁作用によるものです。
    • この藁灰釉の誕生は、日本の陶器に初めて「白」を装飾として利用していく手法を見つけ出したといえます。
  2. 土灰(どばい/ドバイ)
    • 雑木樫(カシ)、椎(シイ)、橡(クヌギ、トチノキ)などの堅木)を燃やして精製した灰であり、主に釉薬の溶剤(媒溶剤)として配合されます。
    • 土灰は石灰質を主成分とし、炭酸カリ、珪酸、アルミナなどを含みます。
  3. 長石(ちょうせき/チョウセキ)
    • 釉石として配合され、藁灰や土灰とともに釉薬の成分となります。

古唐津時代の釉薬の調合は、身近にある入手しやすい原材料を用いて調整した2〜3成分系が主流であったと考えられています。一例として、天然わら灰4、長石3、天然土灰3の割合(容量比か重量比かは不明)で調合し、1250度で焼成する例が示されています。

釉薬の特性と発色

斑唐津の釉薬(斑釉)は、アルミナ成分が極めて少ない「高珪酸質」であるという特徴があります。

この釉薬をかけた器は、高温で焼成されると全体が乳白色の白に焼き上がりますが、以下の要因によって特有の「斑(まだら)」が生じます。

  • 斑(まだら)の発生: 胎土または釉薬に含まれていた微細な鉄分が、焼成中に釉面に青や黒の斑点となってまばらに現れるため、「斑唐津」と呼ばれます。
  • 窯変効果: 窯変によって淡青色・微黄白色となり、神秘的な発色をみせます。
  • 釉調: 釉は全体にやや流下気味で白濁し、部分的に透明になったり、別の色を発色したりと変化に富んでいます。
  • 同系統の釉薬: 斑唐津の釉薬は、瀬戸地方で使用される卯の斑釉(土灰釉にイネ科植物の灰を混ぜたもの) や、萩焼に用いられる白萩釉朝鮮唐津の白い部分の釉薬 と同系統であるとされています。