贋作が多い作品の特徴は?

古唐津の魅力・陶芸の魅力 贋作
Charm of Old Karatsu and Ceramic Art
この記事は約3分で読めます。

陶芸における贋作が多い作品には、経済的な要因、技術的な要因、および鑑定の難しさに関わる複数の特徴があります。贋作は古陶磁器の世界に特に多く存在しており、国や時代、価格を問わず、また安価なものや小品であっても現在でも堂々と流通していると思います。贋作の目的は多くの場合、金銭的利益を得ることです。

贋作が多い作品の特徴を以下に分類してご説明します。

1. 経済的価値と人気が高い作品

贋作は、当然ながら人気のある作品に多くなります。流行は人気のある作品を作り出すとも言われていると思います。

特徴具体的な例根拠
極めて高価で、真作が稀少な作品黄瀬戸六角盃、黄瀬戸鉦鉢(どらばち)、瀬戸黒、志野、絵志野、織部の茶碗、水指、香合など。これらは桃山~江戸初期の限られた時期に作られた美術品クラスの作品であり、状態の良い真作はほとんど流通していません。高価であるため、贋作を手掛ける者が多いです。
著名な作家の作品著名な作家の作品で、特に高値で取引されている作家の作品。多作であれば、少々傾向の異なる作品も本人の作と見誤ることも多くなります。
需要の高い小型作品唐津焼の斑(まだら)唐津のぐい呑み、特に筒型に立ち上がった「立ちぐい呑み」。信楽焼の種壷である蹲る(うずくまる)のような小型の壷。これらは轆轤挽きで簡単に作ることができ、酒器や茶陶として極めて高価で取引されるため、贋作が多いです。

2. 製作技術や鑑定の難易度に起因する特徴

(1) 製作が容易であること

  • 作りやすい焼き物であること。容易に作れて、真偽の判定が難しい物には、贋作が多くなります。
  • 作風が素朴で再現し易いもの:古唐津は「くだけた」作風や絵柄などから、写しがし易く、贋作が非常に多い焼き物です。また、徳利、茶碗、皿などは、特別高度な技術が無くても容易に贋作を作る事ができます。
  • 形や文様に多様性が少ない作品:李朝白磁は形や文様に多様性が少なく、写しを作るのが比較的容易です。

(2) 鑑定の決め手が不足しやすいこと

  • 絵の無い作品:絵は誤魔化しのきかない部分であり、絵柄、筆の運び、絵の具の色などから真偽の判別がし易いとされていると思います。そのため、絵の無い作品(焼き締め陶器など)は判断の手掛かりが少なく、贋作が多くなります。
  • 古色付けが容易な作品:古色は簡単に付けることができ、特に陶器(表面に凹凸がある物、焼きが甘い物、貫入が多い物)は古色が付け易いです。古色が鑑定の決め手にならないにもかかわらず、古く見える物ほど人為的な処理を施された新しい物である可能性が高いため、贋作が多くなります。
  • 鑑定基準(約束事)が再現されやすい作品:唐津焼の「三日月高台」や「縮緬皺」のような「約束事」は、贋作では必ず守られて作られますが、これは容易に真似をすることが出来るため、真贋を見分ける上で当てになりません。贋作の製作者は、鑑定家が注目する特徴を意図的に再現します。

3. 流通や認識の誤解に基づく特徴

  • 図版や書籍に多く掲載されている作品:写真や図版などに多く掲載されている作品は、世間に多く出回っていると勘違いされがちですが、実際には極めて稀な存在である場合が多いです。こうした作品と同系列の作品には贋作が付き物です。
  • 流通過程で産地が偽装される作品:世に知られていない窯場の作品が、土や釉が類似したより高価な著名な窯場の作品として誤認され、流通することで、結果的に贋作(贋作ではない贋作)となってしまうことがあります。例えば、南蛮焼締陶が古備前の名前で流通したり、李朝初期の雑陶器が室町時代の古瀬戸の碗に化けてしまう例などです。