「伝世品(でんせいひん)の特徴」について

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Charm of Old Karatsu and Ceramic Art
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伝世品は、長年にわたり人が管理し、大切に保管されてきた焼き物を指し、地中に埋もれていた発掘品とは異なる経年変化の特徴を持ちます。

伝世品の経年変化の主な特徴

伝世品に見られる経年変化の主要な特徴は、「使用痕(しようこん)」と呼ばれる、長期間にわたり実際に使用されたことによる痕跡です。

1. 擦れ(スレ)と擦傷(すりきず)

伝世品には、大小の「擦れや擦傷」があるのが普通です。

  • 擦れ(スレ):物と物が当たって擦れた痕跡で、日常使用する食器類や厨房用具など、手に持って移動する作品に多く見られます。
    • 擦れの回数が多いほど痕跡は顕著になります。
    • 香炉や花瓶、置物など、持ち運びが少ない作品には擦れは少ないです。
    • 擦れが生じやすい場所は、口縁部、高台周辺、突出した胴部などです。
    • 特に抹茶茶碗では、茶筅が当たる部分(茶筅擦り)、口縁部を茶巾で拭く部分(茶巾擦り)、高台の底面(畳付き)などに多く見られます。
    • 角にスレが発生すると、釉が摩滅して素地(胎土)が露出したり、釉面がやや白濁して艶がなくなることがあります。下絵付けされた作品では絵付の色が薄くなったように見え、上絵付された作品では絵が剥がれ落ちてしまいると思います。
  • 擦傷:強く擦れたり、作品同士の衝突の結果、線状の傷が出来ることです。最大の原因は、昔の井戸水や川の水に含まれていた微細な砂で洗うことだったそうです。

2. 経年変化が見られない場合

伝世品の中には、今窯から出て来たばかりと見間違えるほど、経年変化が見られない作品もあります。これは、長年大切に扱われ、屋内で保管されていた結果、経年変化を免れたためです。

3. 傷の状態と経過時間

伝世品にホツ(欠けの小さなもの)やニュウ(ヒビ)がある場合、それらの傷がいつ頃できたかは、その断面や色の濃さで判断できます。

  • 欠け:周囲の角が丸みを帯びていたり、胎土が黒く変色している場合は、欠けてからの時間が長いことを示します。
  • ニュウ(ヒビ):ニュウが入った部分の色が周囲より濃い場合には、時間が経過していることを示し、周囲の色と違いが少なく淡い色の場合は、比較的新しいものです。

4. 使用痕としての汚れと染み

伝世品には、染み、貫入の汚れ、地肌や釉面の色付き、場合によっては雨漏りと呼ばれる汚れがあると言ってよいほどです。ただし、磁器製品には少なく、陶器で多く見られます。

  • 茶渋:湯呑みや抹茶茶碗に多く見られますが、漂白剤で比較的容易に取り除くことが可能です。
  • 雨漏り(あまもり):不定形の染みで、釉だけでなく胎土を通して表面まで出てきた汚れです。特に萩茶碗のように、吸水性に富んだ胎土や焼きの甘い作品に多く出る現象です。長く使うことで徐々に現れ、「景色」の一部と見なされます。

贋作との対比

贋作は、意図的に古く見せるために「古色付け」や「人工的な擦れや擦傷」を施されることがありますが、その痕跡は不自然な傾向があります。

  • 贋作に人為的に付けられた擦傷は、単調な傷となっている場合が多いです。これに対し、自然な傷は長い年月をかけて色々な方向や強弱のある力で入るため、複雑な擦傷になります。
  • 一般に、古く見える物ほど、人為的な方法で処理されている可能性があり、本当に古い物(真作の伝世品)はそれほど古さを感じさせないと言われることもあります。

重要: 古色は一般の人が思う以上に簡単に付けることが可能であるため、「古色」は真贋の決め手にはならないと注意を促しています。