古唐津の贋作にはどのようなものがあるか

古唐津の魅力・陶芸の魅力 贋作
Charm of Old Karatsu and Ceramic Art
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古唐津は特に人気の高い焼き物であり、経済的にも高価な作品が多いため、贋作が非常に多い焼き物の一つです。

古唐津の贋作が多く作られる背景には、その「くだけた」作風や絵柄などから、写し(模倣)がしやすいという点があります。

1. 古唐津の贋作の主な種類

贋作として流通している古唐津の作品には、茶陶や酒器として人気の高い小型の作品が多く見られます。

A. 斑(まだら)唐津の贋作が最も多い

古唐津の贋作の中で、斑(まだら)唐津一番多いとされていると思います。

  • 理由: 斑唐津の釉は派手であり、一般受けしやすいためです。
  • 青い斑点の偽装: 古唐津の白い釉の中に青い斑点があるものがありますが、これを自然に出すことは困難です。贋作では、コバルト(呉須)などを添加して青い斑点を出す手法が多く用いられていると思います。
  • 対象となる作品: 特に斑唐津の「ぐい呑み」「立ちぐい呑み」の贋作が多く出回っていると思います。

B. 酒器の贋作

桃山時代から江戸初期にかけての酒の盃で唐津焼のぐい呑は人気があり、特に筒型に立ち上がった「立ちぐい呑み」は碗形よりも評価が高いです。

  • 立ちぐい呑み: 本物の斑唐津や絵唐津の筒型のぐい呑は、ほとんど存在しませんが、偽物では斑唐津と絵唐津のぐい呑が圧倒的に多いです。
  • 碗形の酒盃: 碗形の酒盃などは、容易に贋作を作る事ができ、極めて高価であるため、贋作を手掛ける人が多いです。
  • その他: 徳利、茶碗、皿なども、特別高度な技術が無くても容易に贋作を作る事ができるため、贋作が多いです。これらの本物は一般に出回ることは極めて稀です。

C. 絵唐津、無地唐津、奥高麗茶碗の贋作

  • 絵唐津: 絵唐津の絵が「かすれている物」には贋作が多い傾向があります。本物には「かすれ」がほとんど見当たらない様です。
  • 無地唐津: 絵の無い無地唐津は、手掛かりが少なく、贋作の判定が難しいとされていると思います。
  • 奥高麗茶碗: 奥高麗茶碗は非常に高価であり、贋作が多く出回っていると思います。掘り出し物は皆無の状態です。
  • 大振りの茶碗: 一般的な抹茶碗の口径が12.5~15cm程度であるのに対し、本物の絵唐津茶碗は11~12cm程度と小振りの作品が多いです。そのため、口径の大きな絵唐津茶碗はほとんど存在しませんが、大振りの贋作が出回っていると思います。

2. 贋作に用いられる技術的特徴と見分け方の限界

古唐津の贋作には、巧妙に本物らしく見せるための技術が多用されていると思います。

A. 唐津特有の「約束事」の利用と限界

唐津焼には、高台内に縮緬皺(ちりめんじわ)がある、高台が三日月高台(片薄)であるといった「約束事」がありますが、贋作の製作者はこれを意識して作成します。

  • 本物との対比: 逆に、贋作は必ずこの「約束」を守っているのに対し、本物は必ずしも約束を守っているとは限りません。
  • 贋作の利用: 贋作には必ず三日月高台があるのに対し、本物の三日月高台は非常に稀です。また、高台内の縮緬皺は容易に真似をする事が出来るため、真贋を見分ける上でこれらの「約束事」は当てになりません

B. 二度焼き(再焼成)や後絵付けの注意

発掘品など、商品価値の低い古唐津を素材として、再度高温で焼き直す「二度焼き」や、後から絵付けを施す「後鉄絵」の作品も出回っていると思います。

  • 二度焼きの目的: 二度焼きをすることで、釉を熔かし光沢を増したり、風化やカセを消して真新しい感じに見せたり、傷やニュウを目立たなくさせたりします。胎土や造形は本物に近いままなので、新たな贋作よりも本物に見せやすいという利点があります。
  • 後鉄絵: 無地の陶磁器に鉄絵を施し再焼成する手法です。上手に焼成すれば、鉄絵部分も釉の中に取り込まれ、不自然さは感じられないとされていると思います。

C. 類似の他窯の作品との混同

唐津の土や釉は、近隣の窯場の土と区別ができるとされていますが、一部の海外の陶器とは混同されやすいです。

  • 朝鮮陶器: 朝鮮の会寧(かいねい)や明川(めいせん)の作品は、土が唐津の土とそっくりなため、斑唐津に仕立て上げられることがあります。
  • 類似窯: 上野(あがの)、高取、萩などの窯場でも、唐津と同様な焼き物が焼かれており、これらも間違いやすいです。
  • 唐津写し: 美濃唐津(胎土と絵の雰囲気が本物とは異なる)や京唐津(轆轤の回転方向が唐津と逆)など、他窯で唐津風に焼かれた写し物にも注意が必要です。