古越前焼の陶土と成形には、以下のような特徴があります。
陶土(使用粘土)の特徴
- 古越前焼の窯が分布する地域は、花崗岩を基盤とする新第三紀層の地帯でした。
- この陶土は、東方の須恵器窯分布地域(洪積層)の粘土に比べて耐火度が高く、やや鉄分が多い砂質粘土です。これは、寒冷地に適した陶土が選択されたためと考えられます。
- 室町時代の中ごろまでは山土単味で使用されていましたが、室町後期には田土を混ぜるようになり、この時期の作品は黒褐色の器肌を呈するものが多いです。
成形技法の特徴
- 壺類の場合:
- まず轆轤上に円形の底板を作ります。
- その上に粘土紐を巻き上げ、二次的に轆轤で引いた後、器面を箆(へら)や刷毛を用いて調整しました。
- 中には、底面に「下駄印」を有するものも見られます。
- 大甕の場合:
- 底板の上に幅広い粘土紐を巻き上げ、一度乾燥させた後、さらに粘土を継ぎ足してゆく「五~六段のはぎづくり」という成形法が用いられました。これは常滑(とこなめ)焼の技法と同様ですが、常滑のように各段の継ぎ目に押印を連続して施すことはありませんでした。
- 器面は、木を用いて調整されました。
- 古越前の壺・甕・擂鉢(すりばち)には、原則として肩に一つから二つの箆描きによる窯印を施すのが特徴です。
- 鎌倉後期には、櫛描文(くしがきもん)のあるものもしばしば見られます。