可児郡兼山町の木曽川に面した支谷の丘陵に営まれた兼山窯跡群は、古城山地区四基・東山地区二基の計六基が確認され、発掘済みは古城山1号窯のみで全体像はなお限定的です。
製品は常滑と同系の壺・甕が主体で、山茶碗・小皿・鉢はきわめて少なく、形態・色調は常滑品と酷似しますが、陶土の耐火度が高く高温で締まり、口縁帯の折り返しが常滑ほど幅広くならない点に個性がみられます。
東濃の山茶碗地帯にあって兼山が大形壺甕に偏ったのは、木曽川水運を背景とする大容量容器の流通需要に応答した地域的特化と考えられます。
要約(300–500字)
兼山窯は東濃の中で例外的に常滑型の大形壺・甕を主生産とし、山茶碗の比率が極端に低い点で特異です。成形・焼成は常滑に近いものの、耐火度の高い土と高温焼成による緻密さ、口縁帯の処理幅の違いに地域的差異が表れます。背後に木曽川の舟運があり、広域流通に適した大容器需要が立地選好を支えたとみられ、東濃生産体系の中での機能分担を示す好例となります。
【関連用語】
- 常滑:大形壺・甕など日常雑器の大生産地。
- 美濃:東濃域の生産文脈の中で兼山窯が位置づく。

